決断を迫るとき・・・被災6日目
テントでの生活も6日目。

いつまでもこの生活を続けるわけにもいかず、ここのところ毎晩、”これから”について、家族と話合っていました。

今ある選択肢は次の通り。

①神戸周辺で賃貸マンションを借りる。

②滋賀県の祖父の家に移る。

③まだテントで過ごして、仮設住宅の入居を目指す。

④私の会社の独身寮に家族で移る。



賃貸マンションは経済的に苦しい思いをするかも知れませんが、一番無難な選択肢です。

しかし・・・まず、不動産屋が営業していません。

不動産屋にコネもありません。

しかも、噂では神戸近辺の賃貸マンションは、震災特需でどこも満室だとか。。。


滋賀のおじいちゃんの家に行こうか?

これは一番リアリティのある選択肢でした。

しかし問題は、その”遠さ”です。

父の職場は神戸です。朝は相当早いです。

母もパートですが、職場は近所です。

妹はまだ高校生。もちろん神戸の高校に通っています。

そして私の会社は大阪(梅田)。

家族の誰もが、その遠さのために生活の支障が出ることは明白でした。


仮設住宅建設の噂も避難所周辺では出始めました。

あと少しの間、テント生活を頑張れば、仮設住宅ができるのか?それまで我慢するか・・・

あまい考えでした。

仮設住宅が建つのは、いつのことなのか明確ではないし、第一建つと言う保証もない。

建ったところで、当然、高齢の方や障害のある方が最優先で、我が家のように家族全員元気な上に、テントも持ってるところに順番がまわってくるのは、いつになることやら・・・容易に予想できました。


最後の選択肢は、私の勤め先の会社の独身寮に行くというもの。

場所は大阪の茨木市。

神戸からは離れますが、滋賀の祖父の家よりは数段、神戸に近い場所です。

もちろんずっと住める場所としてではなくて、この不自由なテントでの避難生活からの一時脱出が目的です。

母や年頃の妹が居ますが、贅沢を言えるはずもなく、選択肢としては一番悪くないかなと、家族の意見は一致していました。


しかしこの時、私たち一家は、実はここから動くことはまだ真剣に考えていませんでした。

なぜなら、完全な倒壊を免れているあの家(実家)に戻れると思っていたからです。

両隣の家が、我が家にもたれるように倒壊しているので、そのガレキを処分し終わり、屋根や壁面を補修すれば、またあの家に住めるハズ・・・そう思っていました。

家をいつも見てくれている大工さんの○○さんと連絡が取れたら、家を見てもらって、それから考えよう。

そんなあまい思惑を半ば「そうあって欲しい」という思い込みで持っていたのでした。


ところが、そんな決断に踏み切れない避難生活に、決断を迫る出来事が迫ってきました。

「明日から、雨が降る」

そんな情報が入ってきたのです。

避難所の情報によれば、明日から天気が崩れ、何日か雨の日が続くと言うのです。

公園の避難生活者には焦りが浮かびました。

我が家もテントはありますが、テントの中には寒さを凌ぐ、布団や衣類で占領されており、様々な荷物はすべてテントの外に出しています。


(写真は借り物で、イメージです。)

テントも完璧な防水を誇っているわけではありません。

寝ている最中に雨でもしみ込んできたら、もはや外で寝ているのと同じです。

また、これまで深く触れてきませんでしたが、当初の記事で書いた通り、我が家は犬を2匹飼っています。

この避難生活ではずっと、テントの外で過ごしています。

もともと室外犬として飼っているのですが、この真冬に一日中雨に打たれるのは、誰が考えても狂気の沙汰です。

公園でのテント生活にとって、雨はもしかしたら命取りになるかも知れない。

家族誰もがそう思いました。

私は慌てて、テントのまわりにスコップで堀を作りました。

雨のキャンプではこうします。

私は何か仕事をしていないと落ち着かないような、そんな不安が襲ってきました。

そして親父に、

「テントを離れる時期に来たんちゃう?決断しようや。」



雨が降るという話がなくても、もはや家族の誰もが、疲労の蓄積と、洗濯・風呂といった問題のため、テント生活に限界を感じていたのは間違いありません。

家族会議の結果、

「私の勤める会社の独身寮へ一旦身を寄せよう。」

そう決まりました。

天候の崩れとテント生活の限界から、実家再建にメドが建たないまま、神戸を離れる決心をしました。


決めるなり、私はすぐに会社へ電話しに、公衆電話へ走りました。

そして、独身寮を確保してくれた所長に電話しました。

「所長、すみませんが、明日から雨が降るそうなので、寮の方へ家族で行かせてもらっていいでしょうか?」

「おぉー、そうしろ、一部屋ちゃんと確保してるからな。ところで、茨木(寮のある街)までの足はあるんか?」

「ハイ、あります。車は無事ですし、親父が会社からトラック借りましたので。」

「何時頃の予定や?」

「明日の午前中には出発して、昼過ぎには着きたいと思います。」

「分かった。管理人に言っとくわ。」

「ところで所長・・・ウチには犬おるんですケド。。。」

「いっ、犬。問題ないやろ、家族の一員や、連れて来い。気にするな。」

「2匹も居るんですけど・・・」

「何匹でも構わん。俺が言っておいてやる。」

犬のこと、しかも2匹もいること、かなり心配していましたが、所長が力強く背中を押してくれましたので、助かりました。

”犬も家族の一員”

この状況下で、他人のペットに対して、それが言える人はなかなか居ないと思います。

この時の所長の器の大きさには感動しました。


何はともあれ、私たち家族は明日、テントをたたみ、大阪の茨木という街にある私の会社の寮に向かうことになりました。

2008/02/05(Tue) | トラックバック(0) | コメント(4) | page top↑
コメント
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いつも、真剣に(どうなるのかなぁ、大丈夫かなぁ?)と見守る気持ちで読んでいます(*´ω`*) ワンちゃんも家族の一員と言ってくれた所長さん、優しくて大きな方ですね(*´∀`*)よかったぁ。
by: ひまわりさん * 2008/02/05 11:06 * URL [ 編集] | page top↑
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最近読み逃げが多くて、スイマセン><
お昼休みの合間などに読んでいるので、時間がありませんでした^^;

リックルさん。
本当、このブログは一人でも多くの方に読んで欲しいです。当たり前の事などなに一つなく、普通の生活がとても有難い事なんだと気が付くはずです。

わんちゃん2匹も、引き受けてくれた所長さんの人間の大きさには感謝ですね。ただ、独身寮ということが気になっています。一部屋なのかな?
テント生活より、良くなったとしても、かなり不自由な思いをされたのでしょうね。
by: apako * 2008/02/05 22:52 * URL [ 編集] | page top↑
--ひまわりさん、いつもありがとうございます^^--

当時の所長は、もう一線は退かれて、子会社でのんびりしていますが、やはり未だに頭が上がりません。
って言うか、一生上がらないと思います。
いつもブログあたたかく見守ってくれて、ありがとう。
by: リックルハング * 2008/02/06 01:01 * URL [ 編集] | page top↑
--あぱさん、こんばんは^^--

いつもありがとう。
テントより少しでもマシなところへ・・・の思いで決断しましたケド、やっぱりどう考えても普通の生活じゃありません。
でも当時は、テントを一刻も早く脱したくて、この決断となりました。

このブログは、自分の記憶の整理用ですけど、こうして読んでもらえる人が居て、やっぱり嬉しいです。
by: リックルハング * 2008/02/06 01:05 * URL [ 編集] | page top↑
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